五つの傷が癒えるまで

40代ブラック勤めワープワのおっさんが今更Janne Da Arcを眺めるブログ

2019-01-01から1年間の記事一覧

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Kino's side-3~ 元々誰が悪いなんて話でもなかった。 友達同士だからこそ、何も言えなかった。 ああすれば良かった、こうすれば良かったなんて後から思う事はできる。 だけどその場で解決策を考え付いて、しかも実行に…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Kino's side-2~ 元々主役になるには少し弱い、キーボードという楽器。 他のメンバーの合間を縫うように隙間を埋めたり、他の楽器に被せて旋律を際立たせたり、音の厚みを強調するような別の音を作り出したりして、全体…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Kino's side-1~ 音楽性なんて、最初っからみんなバラバラだった。 歌が上手いから、楽器ができるから。 そんな理由で一緒に居た訳じゃない。 歳を取れば取る程、ヴォーカルなんて下降していく。 もしルートが歌えなく…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Shu's side-4~ 結局タッツンには何も言えないまま自宅近くの病院を受診し、大した事ではない、風邪と過労だと診断された。今思えば、ここで何とかしておくべきだったのかも知れない。それからも気になる症状はありつつ…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Shu's side-3~ そもそもベースは、ギターと違って弾きながら歌うような楽器ではない。しかもタッツンの考えるベースのフレーズは、リズム重視でありながらヴォーカルのメロディを下支えするような構成になっている事も…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Shu's side-2~ 休止後、当初からの予測通り、ルートのソロは大当たりだった。実際バンドからソロに転向して、上手くいくのはヴォーカルくらいだ。どこの世界にヴォーカルより売れたドラムやベースやキーボードがいるだ…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Shu's side-1~ ルートを見送った後、タッツンは暫く気が抜けたようになっていた。 『自分よう言うたな、あんなの。俺は無理やわー、おっさん相手に玉砕覚悟のプロポーズみたいな』 はははは、と笑ったタッツンはベース…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Root's side-6~ 『ちょっと、考える』 随分経ってから、泣き止んだ俺が出した答えはそれだった。 『ちょっと考えて来るわ。時間は、多分いっぱいあるし』 シュウが振り向くと、ユータが時計をかざして見せている。 キ…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Root's side-5~ 『ルートは今ここで必要とされてるし、1人でやるのも気楽でええかも分からんけど、ロックバンドのヴォーカリストである事に疑いはないやんか。やったら、やっぱりジャンクが一番似合ってるって。俺は、…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Root's side-4~ どれ位時間が経ったのか、ぼんやりと意識が戻ってくる。 演奏は終わっていて、みんながタッツンの所に集まっている。 『じゃあこれ、一時帰宅みたいなもんなん?』 シュウが怪訝な顔でタッツンに聞いて…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Root's side-3~ こいつ、こんなに綺麗だったっけな。 1番に目に飛び込んできたのは、やっぱりタッツンだった。 ベーシストとしては基本に忠実でバスドラに合わせて底辺を支えるタイプ、なのにやたら目立つこいつ。ただ…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Root's side-2~ 湿気た空気の漂う蒸し暑い階段を、1人で上る。 階段のあちこちに、ちらほらと花束が置いてあるのが見える。 1番上まで上ると、薄っぺらい鉄扉の前に花や色紙、手紙や供え物が沢山並んでいた。 もう十年…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Root's side-1~ シュウとユータの訃報を聞き、信じられない思いのまま俺が帰国した頃には、葬儀も終わり周囲も落ち着きを取り戻し始めていた。 その夜は尊敬する先輩バンドのヴォーカリスト、エドワードさんと約束があ…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Kazuya's side-8~ 『俺は、どうしようかな。でも2人、待つんやん?』 シュウがユータとキノを見て笑う。 『やったら、とりあえずで悪いけど、俺も一緒に居ってもええかな。先々どうするかは、また考えて』 『よっしゃ…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Kazuya's side-7~ 『4人揃ってこっち来てしまって、みんな悲しむかな』 『ま、俺らはお互い悲しまへんで済むけどな』 『後処理的な事、やっぱり大変やろうか』 『そういえば俺どうなったんやろ。誰か見つけてくれたか…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Kazuya's side-6~ 『なあ、どこまで行くん?』 『多分もうちょい』 『多分てそれ何なん、どこ行くん?』 誰も通らない夜の山道。おばけでも出そうだな、と自分を棚に上げながら歩いていると、後ろからかすかにジャンク…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Kazuya's side-5~ 振り返ると倒れ込んだ自分が見える。 見えるが、ちょっと待て。 『うわ、何やこれ』 思わず声に出てしまった。顔面は紫色だ。 喉元に自分の両手の爪が食い込んでいる。 信じられない程だらしなく伸び…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Kazuya's side-4~ シュウの葬儀の翌日、ユータは観客参加型ギタリストイベントに出演し、ライブは大盛況だったようだ。夜になり観客も帰り、本人も宿泊ホテルまで戻る準備をしていた所、ステージのすぐ下を流れる川の…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Kazuya's side-3~ ぼんやり灯る外灯を見上げる。こんな空じゃ星も見えない。 シュウはどうしてるのかな。 もう星になったんだろうか。それならユータは。 俺の脱退を理由にジャンクが解散して暫くした頃、シュウから検…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Kazuya's side-2~ メーカーも事務所も、ジャンクを売るつもりなど大してなかった。 元々新人バンドに似つかわしくない実力を持っていたシュウなどは、バンドよりもさっさとスタジオミュージシャンとして、メーカー所属…

www.pixiv.net 五つの傷が癒えるまで~Kazuya's side-1~ 湿気た空気の漂う蒸し暑い階段を、1人で上る。 ここのスタジオを使い始めた頃に屋上の鍵を貰っていた。 以前は屋上の緑化などを掲げ誰でも入れるようにしていたらしいが、今は立入禁止になっている。…