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五つの傷が癒えるまで~Root's side-6~
『ちょっと、考える』
随分経ってから、泣き止んだ俺が出した答えはそれだった。
『ちょっと考えて来るわ。時間は、多分いっぱいあるし』
シュウが振り向くと、ユータが時計をかざして見せている。
キノは困った顔でこちらを見ている。
『え、何?何なん?え、いやまさかのこっちコース?』
タッツンは知らなかったようだ。
『うん、俺、先に行く所あるから』
俺は傷つけ過ぎてしまった。沢山の人を。
自分のやった事の報いは、自分が受けなければならないのだろう。
『お前、どさくさに紛れて何やっとったねん。人の陰に隠れてほんまにもう』
タッツンは信じられない、という顔をしながら
『なあほんまなん?俺と同じって事はないやろうけど、ほんまにこっちなんやったら、何かときっついで。ていうかもう時間?時間切れ?嘘やん何やこれ、俺一体何しに来たんや』
怒ったように何か言っている。3人が笑って見ている。こいつらは相変わらずだな。
『よっし、じゃ最後にあれ言うていけ、あれ。ほらあの、We are…っていうやつ』
やけくそのようにタッツンが右手を差し出す。
はっと気が付いたらしいシュウが、慌てて駆け寄って来てタッツンの手の上に自分の右手を乗せる。
『はいはいはい俺も俺も、We are…』
いつの間にかシュウの隣に居たユータも、そっと手を伸ばす。
『We are…』
最後はタッツンの後ろから顔を覗かせたキノが、恥ずかしそうに上から小さな手を重ねる。
『はい、We are…』
何やってるんだよ。笑いそうになりながら、目の前で積み重なった4つの手を、自分の両手で上下から思いっきり挟み込んだ。
『We are Junk!!』
5人分の笑い声が、ようやく青空に響いた。