五つの傷が癒えるまで

40代ブラック勤めワープワのおっさんが今更Janne Da Arcを眺めるブログ

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五つの傷が癒えるまで~Kazuya's side-5~

 

 

振り返ると倒れ込んだ自分が見える。

見えるが、ちょっと待て。

 

『うわ、何やこれ』

 

思わず声に出てしまった。顔面は紫色だ。

喉元に自分の両手の爪が食い込んでいる。

信じられない程だらしなく伸びた舌。

口の端にまだ泡が見える。

 

『こんなん見つけた人それこそトラウマやろ、何とかならへんの』

 

触ろうにも自分の体に触れない。すり抜けてしまうのだ。

慌てる俺を横目に2人は相変わらずだった。

 

『俺もやったなあそういうの、川で自分見つけて引っ張ろうとしたりとか』

『そうなん?俺は病院やったからやらんかったけど、なんか不思議やったで自分が寝てる所見てんの』

『ちょっとこれ、ほんまこのまんまなん?どうしようもないん?』

『うん。ていうかトラウマって、誰かに見つけて貰うつもりでいるやん?』

『へ?』

『ここ滅多に人来いひんし、正直異臭騒ぎとか腐乱死体とか、なあ』

『まあこの気候やからな。割とあっという間に』

『やめてや、冗談やろ…』

『それに顔ばっかり見てショック受けてるけど、これっておもらし』

『言うなあああ』

『うわ、ほんまや』

『見るなあああ』

 

どうしようもなく無残な自分の抜け殻は、本当にどうしようもないようだった。

でもこれ本当にこのままでいいの?困惑する俺に2人は行く所があると言い出し、朝日が昇り始めた頃に3人で歩き始めた。

 

『朝焼け、たまに一緒に見たよなあ』

『あー、スタジオとかでな。朝までかかって』

『大っ変やったけど、楽しかったな』

『そうやな。レコーディング大変やけど楽しい、ぐらいまでが幸せやったな』

『やっぱそうかな。どこで躓いたんやろうな』

『みんなでしょうもない事しゃべるぐらいの余裕も、もうなくなってたからなあ』

『それも大きいかもな。空気感がなくなっていったというか』

 

生きている間にもっと話せていれば良かったな。

大事な話も、どうでもいい話も。勿論、できなかったのは自分のせい。

だけどそうする事でしか、お互いの気持ちなんて分かりようもない。

どこまで行くのか聞かされないまま夜まで歩き続け、今は街灯の少ない狭い坂道を上っている。