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五つの傷が癒えるまで~Root's side-4~
どれ位時間が経ったのか、ぼんやりと意識が戻ってくる。
演奏は終わっていて、みんながタッツンの所に集まっている。
『じゃあこれ、一時帰宅みたいなもんなん?』
シュウが怪訝な顔でタッツンに聞いている。
『うん、まあ。でもほら、折角やから華々しく迎えたいやん?それで今日は、な』
タッツンは言いにくそうにしながらこちらを振り返り。
『おう、やっと起きたん?おはよういらっしゃーい』
『あれ、早かったやん?』
『久し振り、1人で老けたなあ』
『ちょっとまだ片付いてへんねん、ごめんなあ座る所もないわ』
口々に話す様子は以前と同じ。俺は不思議な物を見るような気持ちで近寄って。
『…久し、ぶり』
自分の声が何だかよく分からない。
どうして、みんなこんなに平気な顔で俺を迎えてくれるんだろうか。
明らかに俺達は歩く道を違え、戻る事ができないままになってしまった。
その原因は俺。休止に理由が幾らあろうが、解散が俺のせいである事に変わりはない。
『どう、したん、みんな』
キノとユータは可笑しそうに顔を見合わせて
『うん、ルートが来るまでみんなで練習してたねん、な?』
『もうずーっとやで、待ちくたびれたわ』
『同時に今日はタッツンの復帰一発目、と思ったんやけどまだみたいやからな。時間かかるなあやっぱりな』
シュウも口ぐちに、何か違う事を言う。だからそうじゃないって。
『え、待って、たん?なんで?怒ってへんの?』
『はあ、お前なあ』
タッツンが呆れたように溜息混じりに言う。
『あれからどんだけ経ってると思うねん、バンドどころか小学校で出会った所までひっくるめても、離れてからの方がずっと長いっちゅーのに』
『ほんまやなあ』
『えー、そんなに経ってたなんて気が付いてなかったわ』
『タッツンなんで言うの、俺わざと黙ってたのに』
『気付いてたん?言うてえや』
『言うてどうすんのそんな事わざわざ』
話しながらユータが時計を気にしている。
キノが横から覗き込み、眉をひそめている。
タッツンはこちらに向き直り、神妙な顔で話しかけてくる。
『なあルート、また一緒にやろうや。って俺が言うのも変やけど。ルートにはジャンクが一番合ってると思うで』
タッツンは痛い程まっすぐに、俺を見つめていた。