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五つの傷が癒えるまで~Kazuya's side-7~
『4人揃ってこっち来てしまって、みんな悲しむかな』
『ま、俺らはお互い悲しまへんで済むけどな』
『後処理的な事、やっぱり大変やろうか』
『そういえば俺どうなったんやろ。誰か見つけてくれたかな』
『タッツン、スタジオで練習してたん?ベースの?』
『うん、まあ、ちょっとだけ』
話しながら歩いて、それでも誰も切り出さない。
仕方ないのかも知れない、と思う。基本生きている時と大差ない。
でも、はっきりと誰もが思っていた。
たとえもうジャンクがなかったとしても。
誰も言い出さない事が、かえってそれを印象付けていた。
なら、俺が言うしかないんだろう。
『ルート、どうしてるんかな』
全員が立ち止まり、黙り込む。俺達のヴォーカルであり、リーダーでもあったルート。
大切な友でありながら、俺が傷つけてしまったルート。
俺達に失望し、1人ソロを選び、戻る事のないまま活動を停止したルート。
『ちょっと遅かった、よな』
シュウが静かな声で言う。ユータは目線を下げて俯いてしまった。
キノはまた泣き出しそうな顔をしている。
『俺はそれでも、また一緒にやりたかったな』
自分で言ったその言葉に、自分でも胸を押し潰されそうな感覚になる。
俺はルートと、みんなと、やっぱりジャンクがやりたかったんだ。
自分から脱退してさえ、それでも。ジャンクの自分はたったの5分の1で、パズルの1ピースでしかない事すらも、俺にとっては揺るぎない心の支えだった。
もう無理なんだ、他の道を探さなければならない、ずっと待っていたって何も解決しない。それが分かっていても。それぞれが悩み後悔し、心に傷を抱えたままで何年経っても先に進めなかったり、がむしゃらに行動を起こした所でやっぱり進んでいる気がしなかったり。そもそもソロ活動なんて、ジャンクがあるからこそ成立する物だったのに。
長い沈黙の後。口火を切ったのはユータだった。
『待ってみようかな、俺』
キノが驚いたようにユータを見る。
『あんまり変わらへんやん、前と。これからどれぐらい大変か分からへんけど、前かって大変な事いっぱいあったんやし。それやったら、なあ?』
ユータが確認するように俺達を見回す。
『俺は、待ってたい』
真剣な顔つきでそう言ったキノは、もう泣いていない。
『シュウちゃんは、どうすんの?』
シュウは本当は、どう思っていたんだろうか。
きっと理解はしていても、納得はしていなかったはず。
ルートを待ってる、なんて単純に言ったって、いつになるかも分からない。
待っていてまた会えるかどうかも、定かではない。
みんなが自分を待っていた事を後からルートが知ったとして、結果は前と同じかも知れないのに。